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加工食品の賞味期間

新鮮野菜や、鮮魚の賞味期間というのは、その性質や保存状態次第で、ごろごろ変わります。 3日なんて云う短いのもありますね。 一方、加工食品 の賞味期間というのは、比較的決まりきった感じがあります。 ジュースで9ヶ月とか、ジャムで1年とか、ツナ缶詰で3年とか。 もっとも、現在は賞味期限 表示になったので、賞味期間は一般消費者の方々には一般的でなくなりました。

賞味期限とは?

食品を定められた条件で保管し、美味しく食べることができる期間を賞味期間といいます。 賞味期限は、賞味期間を基に算出した、賞味期間の終わる 日です。 その日を1日過ぎたからといって、すぐ食べられなくなるわけでは有りません。 筆者もニュージーランド生活時代は、半年も前に賞味期限の切れ た、ちらし寿司の素などをアジアフードショップで、「ありがたや」と買っている有様ですが、まだ生きています。(笑。当然自己責任です)

定められた条件と書きましたが、これが重要です。 例えば、「-18℃以下で保存すれば、来年の2月が賞味期限です」と云う冷凍食品を、+5℃の冷蔵庫に 保管して、賞味期限前に腐ってしまっても、それは製品の欠陥ではないですね。 冷蔵庫に保管した人の過失です。 
(結構こういう苦情ってあるものです)

賞味期間を左右するもの

上で書いたように、保存条件は重要です。 全ての加工食品は賞味期限を保証するために必要な条件を容器に書いてあります(下の例の太字のとこ ろ)。
品  名 :
原 材 料 :
殺 菌 方法:
内 容 量 :
賞味 期限:
保存 方法:
原 産 国:
輸 入 者:
スイートコーン
スイートコーン(遺伝子組み換えでない)、食塩
気密性容器に密封し、 加圧加熱殺菌
1本
枠外上部に記載
直射日光を避けて常温で保存してください
ニュージーランド
○×株式会社 
これが食品 の種類により「冷暗所」だったり「10度以下」だったり、「-18℃以下」だったりします。

缶詰・レト ルトパウチ製品は「常温」で保管される事を前提に製造されています。(詳しくは「レトルトについて」に書きました) 冷凍や高温の場所での保管は止めた方が いいです。 冷凍するとプラスチックフィルムがもろくなり、ピンホールの原因になりますし、高温の保管は風味の劣化を招きます。


殺菌条件と賞味期間

レトルトパ ウチ入りのカレーと、缶詰のカレーは同じ種類の製品です。 どちらも容器(レトルトパウチかブリキ缶)に密封してから容器ごと加熱殺菌します。 と言うわ けで、まず、缶詰の賞味期限について。

食品缶詰の中で、一番賞味期限が長いのは、おそらく魚缶詰です。 これは、加熱殺菌条件が、食品の中で最も強烈だからです。 なぜかといいますと、魚缶詰 は魚臭さを消すために、意図的に強力な加熱殺菌条件をかけているのだそうです(長い殺菌時間、高い温度)。 他の食品缶詰のように、「風味を残そう」とし てはいけないのだそうです。 結果的に強い殺菌で、耐熱細菌の残存の可能性が極端に減り、賞味期間が長くなるのです。 (スウェーデンの殺菌してない魚缶 詰スールストレーミング(中で細菌が発酵して缶が膨らむ)は除く)。 

一方、普通のホワイトソースやカレーなどの調理缶詰は、原料の風味が残っていないと、美味しくないですね。 その為、魚缶詰ほど殺菌条件は強くないので賞 味期間は2年程度になります。

ちなみに保存条件がよければ、ある種の缶詰は50年たっても、味は落ちますが、食べることはできます(筆者は10年物のビンテージ(笑)スープ缶詰食べた ことがあります)。 何処の会社だ、そんなに在庫管理が悪いのは!hi


空気を通すプラスチック

さて、缶詰の賞味期間を決定するのは、ほぼ上記の事柄ですが、レトルトパウチの場合、別の要素があります。  容器のガスバリア性です。

プラスチックが空気を通すもんかと思っている方が殆どでしょう。 プラスチックやゴムは空気を通します。 ゴム風船は、いつの間にかに萎んでしまうのをご存知でしょう。 これは 極端な例ですが、プラスチックもゴム同様、空気を通すのです。 どれだけ空気や水分を通さない能力があるかを「ガスバリア性」と呼びます。 全てのプラス チック容器は気体や水の透過性を持っています。 (PETボトル入り炭酸飲料が、同種の缶入りより炭酸が弱く感じるのは、この為です/炭酸飲料のガス抜け 関連の話題はこちら)

レトルトパウチの袋のメーカーはレトルトパウチ食品の設計に合致させるために、素材や、その組み合わせを注意深く行います。 一見、唯のピラピラの1枚の フィルムに見えますが、実は何層ものフィルムを貼り合わせた、日本の誇るハイテクの一つです。 (ZLの食品会社も少なからずMade in Japanの袋を使っています) 

ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、が一般的な素材です。 またガスバリア性を向上させる為に、アルミニウムフィルムを挟んだり、特 殊なコーティングを表面に施したりします。

どれにせよ、缶やガラス瓶のような、ガスバリア性100%の、空気を完全に遮断できる容器にはかないませんが。。。。。

レトルトパウチはガスバリア性が100%ではないので、酸素が少しずつフィルムを通過して、中身が酸化します。 食品の酸化は、色の退色、風味の減少等を起こします。 そこで、レトルトパウチ製品は、そのようなことが起きる前までの期間を調べて、賞味期間を設定しています。 その為、缶詰より賞味期間が短 くなります。 

ついでですが、カレーのような脂肪分が多い食品には油脂分が光を受けて酸化し、酸化脂肪になる事を防止するために、アルミフィルムを使用するのが一般的で す。 ボンカレーが発売当初、透明袋だったのが銀色の不透明袋になったのは、その対策の為でしょう。

酸化酸化と仰々しく書きましたが、この酸化は、皆さんの、ご家庭のキッチンで起きている酸化より、遥かに微小なレベルでの酸化ですので、健康がどうこうと 言う心配はありません。 ご家庭の食品酸化の一番多い例は、てんぷら油の延々再利用ですね。 「油古いなぁ、ゲップが出る」と云うのは酸化脂肪による化学 性食中毒一歩手前です。 


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