白衣の話
お医者さんの白衣は「作業着」です。 お百姓が着ているツナギや、電気工事技師が着ているポケットだらけの服、潜水士の潜水服と同じで、作業上の必要性の
ために着る服です。 これは警察官や軍人の「制服」のように地位や職務を社会に知らしめるべく着ている服とは似ているようで役目が違います。
白衣は作業着
ところが、この、安いものは2000円ちょいで買える芸の無いピラピラの服を、社会的ステータスだと思って着ている人が、医師に限らず居るから困るので
す。
職業に貴賎なしとはいえ、昔ほどではないですが、他の仕事と比べてお医者 さんは尊敬されるべき仕事です。 お医者さんが着ているのが白衣。 で白衣を着ている人は偉い人。 という認識が生まれてしまったのでしょう。 日本は昔 から身分によって着る事が出来る着衣が厳然と区別されていましたから、ドレスコードによる身分の区別を受け入れやすい文化でもありました。 で、この傾向 は他の国に比べて強いかもしれません。
そのお医者さん ですが、なぜ白衣を着ているのか? を考えてみた事はありますか?
食品メーカーの白衣のほうが綺麗なわけ まっとうな食品工場では白衣は純然たる作業着であり。 作業現場でのみ着 る物です。 私の工場でも食事やトイレの際には脱いで普段着に着替えてから行く事にさせています。 また、ZLの食肉工場、乳製品工場では、作業段階ごとに着る白衣が ことなり、部屋を替わるたびに着替えさせられます。 先進国のまっとうな食品工場ではそれくらい、微生物汚染防止という事に気を使っているのです。 作業着の洗濯も工業的洗濯業者に出して、「家庭で洗濯してもらう」なんてことはありえません。 家庭で下着と同じ洗濯機で洗ったら白衣が大腸菌まみれになります。 大腸菌だけで済めばいいけど。。。。 洗剤の香料がついたりもします。 とても食品工場の作業着としては使えません。 まともな食品メーカーは外部に委託洗濯に出していますし、着替えの数も洗濯のサイクルを勘案して「一枚多め」くらいの感じで用意しています。 最終製品の色沢検査ばかりやっている人は白衣は自分の服の汚れ防止ですから数日に一度でいいでしょうし、製品の細菌検査している人は毎日交換でしょう。 |
ところが、体力が落ちて、普通にヒトに付着している細菌でさえ、それが原因で重篤な症状に陥ってしまう弱った人がたくさん居る病院で、白衣を「制服」のように考え、何処へ行くにも同じ白衣を着ている人のなんと多い事か。
そのような状態では、院内感染なんて起きて当たり前です。
白衣は自分の働く場所に置いてくるべきなのです。
どうして、こんな事が起きるか?
白衣を着 ていると皆が頭を下げてくれるから。 理由はそれだけでしょう。
私も学生時代に化学実習の空き時間に、隣接の医学部棟へ、白衣のままお茶を飲みに行った事があります。 患者さんたちが頭を下げられます。 こっちは何で
お辞儀されるのか分からずポカンとしていました。 お茶を飲みながら「白衣だ!」と分かったわけです。 (化学実験の場合の白衣は、薬品によるヤケドなど
の災害から身を守る為に着ます)
これが、医療従事者が白衣を脱げない理由なのでしょう。 そして因果(院内感染)は巡る風車。 今日もあちこちで死ななくてもよい人が死んでいきます。
さて、この馬鹿な話は、病院だけではありません。
とある研究所 にて
某食品業界団体 の研究所で見た光景ですが。 そこの技術系職員が白衣のまま、外に出てきて車で食事に出かけていってしまいました。 その人は食品の細菌検査などをする訳 ですから、サンプルが自分の服や体についている細菌に汚染しないように白衣を着るわけです。 その白衣を町の中で着れば外界の「バイキン」を大量に検査室 内に持ち込むわけです。 正確な検査が期待できなくなります。 つまり、その人は、なぜ自分が白衣を着ているのか、まるっきり分かっていないわけですね。 それと、ある種の人々には、間違えなく白衣への憧れが有ります。
とある、日本の惣菜会社の工場。
事務所でも皆、工場用の白衣です。
素人の工場見学者には、清潔な雰囲気の工場に見えるのでしょう。
しかし玄関先の掃除をしていた人も、同じ白衣。。。。
朝は工場前庭で白衣のままでラジオ体操。。。
それで、食品生産現場に入っていくのか?おい! と聞きたくなりました。
このように、作業着と制服の切り替えの出来ていない人々が、あなたの家族の命を縮めてくれるのです。
これは、衛生には関係ないですが。
とある県の公安委員会運転免許試験場
日本の運転免許証の更新に行った際、白衣の係官が出てきて交通安全について講義をしていました。 私は彼に白衣を着る合理的理由を全く見出せませんでし た。
おそらく白衣を着る人は偉いという思い込みが警察社会にはあるのでしょう。 それで着たかったとか?
白衣。 ただの作業着なんだけどねぇ。
(c) ZL2PGJ 2004-2006 使用条件