天然酵母パンという正体不明の食品が出回っている。
XYLや友人と食事をしていて「天然酵母パンでございます」というものが出てくると「じゃー反対語に合成酵母というものがあるのだろうか?」とか「いや、魚と一緒で天然対養殖という概念があるのだろう」と笑い話になる。
先日、市内で「天然酵母パン」というものを買いまして。 感想「酒かす臭い」。 なんで?
XYLの卒論と私の卒論は中身の充実度は天国と地獄のように差がありますが(当然XYLが上)、酵母を扱っているという点だけは共通項。
そこで、二人の結論「野生酵母のことを言っているのではないか?」
大気中には近代以前の伝統的酒造などの醸造業を支えた野生の酵母がうようよしている。 このほかにも数は少ないが食品を変敗させたり、病気の原因になったりする酵母(yeastイースト)も浮遊している、それらをひっくるめて野生酵母と呼んでいる。
家畜である豚の原種がイノシシ。 天然教の信者さんが天然酵母と呼んでいる野生酵母と、一般的なパンやさんが使っている工業用酵母は、この猪と豚の関係に似ている。
猪は飼いにくい、肉が少ない、うまくない(元肉屋が言うのだから間違いないよ)。
豚は飼いやすい、肉がたくさん取れる、うまい。
(うまい豚肉の話はこちら
野生酵母は温度管理が難しい。 ほどよくパン生地が膨らむ温度が限られている。 工業的に培養した酵母は品種改良で広い温度幅で良い発酵をする。 つまり、この写真のようにいびつな発酵をするのが下手糞パン屋が焼いている「天然」酵母パンである。
ここの場合、昔の日本酒に使っていた酵母が多く入っていたので酒かす臭くなったのだろう。
ウンチクも結構だが、パンはパンらしくおいしく膨らんで(膨らませすぎは最悪)安定した品質であることが一番。
これも「天然」がすべて善だと思っている理科嫌いの消費者が育てたいかれた業者さんのひとつなのでしょう。 いまにテトロドトキシン(河豚毒)も「天然だから体に良い」などと言い出すのではないかと思っています。