さて、我が家の瓦総重量10トン これを剥がして、下ろして、割れているのは替えて、アスファルト系の防水シートを入れて、また上げて、並べて、一枚づつ改正建築基準(2022年)で全釘打ちするわけです。 上げて並べて釘打つだけと思ったら、大間違い。
(皆様お住まいの住宅のほとんどの屋根の瓦は釘打ってませんよ。 飛んで当たり前。)
並べる順番があるんだそうですよ。
今の瓦はそうでもないそうですが、40年前とか、それ以前の歴史建造物の瓦は、規格品であっても、個体差が結構あって、新築の際にはまず屋根にのせる前に隣合わせになる瓦の組み合わせを決めるのだそうです。 なぜそういう事が起きるかと云うと、昔の瓦工場の焼成窯は熱分散が均一でなく、極端に言うと焼き過ぎと、生焼けがロット内で発生していたそうな。 焼き過ぎは固くて縮まり、そうでないのは寸法が大きい。 そもそも焼く前と比べると寸法が1割ほど縮むそうです。 単純収縮だけではなく不等収縮(いわゆる歪み)も出てくるでしょうから、まず選別作業は、よじれや寸法が極端でない瓦とヒネた瓦に分類することから始めるのだそうです。
つまり、素直なやつと そうでないやつに わけて
ヒネ、いい子、ヒネ、いい子、と云う順番を決めるのだそうです。 「そうしないでヒネばかり残ると、瓦間の隙間が大きくなって割れたりする雨漏りしたりする原因になります。」
確かに全てではないですが瓦に数字が書いてあるのですよ。 新築のときの瓦の順番にしないといけないところなのですね。
新築のときの瓦屋さんは順列並べ替えが ぴよぴよ🐤 いわけです。
で、今回は関東ローム層の赤土接着の代わりに全釘打ちなので、材木を防水シートの上に打ち付けて、そこへ瓦を打ち付けます。
さすがに1990頃になると「JIS A 5208 粘土がわら」で歪み誤差4mmと定めているので、重ねて隙間が出るような標準瓦は無くなりますね。 その為、全瓦に番号を打つことはないようですが、「お寺さんの瓦で、ご住職が、瓦に一文字づつ御経を書かれて、それを載せたときは、一度仮載せして、全部に番号振って、降ろして、住職が御経を墨書して、それを番号を頼りに載せる。」と云う作業をされることもあるそうです>瓦屋さん。
ちなみにこれが東大寺のような特注特大瓦になるとJISの規格外ですから、全瓦でジグソーパズル状態になるようです。
屋根の尾根筋の瓦を棟瓦と言います。 妙に棟瓦が高く積み上がっている家がありますが、あれは何か目的があるのか屋根屋さんに聞いてみますと
「あれは、見栄です。 隣家の棟より高くとか、分家は本家より高くしないとか、色々注文はありますが、建築上の必要性ではなく、ただの見栄です。」 だそうな。
棟瓦の端に付くのが鬼瓦。 別に鬼の顔をしていなくてもあそこに付ける瓦は「鬼瓦」なんだそうです。 我が家の屋根には鬼瓦は付けませんでした。 デカいのがあるんだけどねぇ。
我が家の棟瓦は高くしませんが、それでも耐震用金物を入れてもらいました。 よく地震や風害で棟瓦が崩れている光景が見られますが、これがあると高率で崩落を防げます。
これが完成すると、こうなる。
我が家の屋根は銅屋根と瓦屋根のコンビですが見栄えだけで付けた瓦の軒が瓦の重みで沈下していたので、これは瓦を銅に替えてもらいました。 ついでに沈下補強も。 三井農林も考えて作れよな(そんなだから会社がなくなったが)。
さて冒頭の写真の瓦の上に一列に置かれた瓦。 何だと思います?
我が家は二階の雨樋のメンテナンスが面倒で取っ払ってしまって、雨の滴るところに石を詰めた溝を作ってある(飛鳥時代からある工法)のですが南面は二階の雨水が一階の軒の屋根に落ちます。
これが毛細管現象で軒の下地を腐られる原因になるというので、付けていただいた緩衝瓦なのです。 水滴で穴も開いて来るそうですが、「そうしたらこれを替えれば良い。」 まぁ その頃にはPGKもPGJも骨になって相模灘に沈んでいますから、やるのは次に住む人だね。 これはモルタル用ボンドで止めてあるそうで「これがある家は半径10kmで片手で足りる」そうな。 なんか機能装備って好きだなぁ。
雨に濡れた本瓦ってきれいよね。 こういう画もあります。https://www.momat.go.jp/collection/j00148
屋根の縁は負荷がかかりやすいので、モルタルや漆喰で固めますが、屋根の横面はネジで止めてありました。
微妙にずれて軒端面が凸凹していた瓦屋根ですが、
お見事に一直線になりました。
完成!
奈良でよく見かける鬼瓦ですが「関東じゃほぼ見ないですねぇ」とは瓦屋さん。
着工から2ヶ月掛かりました。 壁も塗り直してピカピカであります。
込み込みでNDRF-RSが買えるお値段ですが、家が安かった(首都圏では庭なし一戸建ても買えない値段であります)ので、妥当な予防保全の投資ではあります。
以下は着工時の記事
屋根屋さんはこちら
我が家のあとは山手線沿線で仕事しているらしい。 能登の屋根応援にも出かけて、その後は岐阜の寺をやるのやらないの。 絶滅危惧業界は生き残ったら忙しくて仕事を選べる立場になるという、実に需要と供給の正義のお話であります。
しかしまぁ、瓦がきれいに並ぶだけでこんなに見違えるようになるとはねぇ。