「30年ごとに葺き直しをしましょう。」と言われております。 陶器瓦は焼き物で100年くらい平気で持つはずなのに何故?
それはね。 下の防水シートが腐るからなのよ。
我が家の屋根の整備をしている屋根屋さん曰く「防水シートは二枚重ねにして、上手にやって30年だね」 我が家は築40年近い。 と云うわけで三州瓦の屋根をひん剥いて防水シートをまるまる新品にします。 新築時の屋根屋さんも大層いい仕事だったらしく「こりゃ藤沢市かどっかの屋根屋の仕事だな」。 使っている素材でわかるそうな。 当時は瓦を葺く屋根屋さんがたくさんいたので遠くから来る訳がなく(遠くでも隣県)、そうすると、誰だか見当が付くらしい。
さらに、屋根瓦は土と釘と針金で止めてますが、関東では関東ローム層の赤土を主とした混合材を使うそうですが、関東であっても神奈川県の馬入川以西はコンクリートを混ぜたものを使うそうです。 富士山に近すぎて関東ローム層に大粒の火山灰が混ざっているため、不向きなのだそうです。 下の動画でも土を使った瓦の葺き方がわかりますね。
土の下に防水シートがあって、それも品質に松竹梅(一番安いのは塩ビシート)があるので、屋根もお値段に正直であります。
土と釘と針金 と言いましたが、すべての瓦が屋根に釘でついているのは最近の家だけです。 建築基準が変わってすべての屋根瓦を釘で屋根に打ち付けろになったのは2022年から。
https://www.yane.or.jp/kawara/guide.shtml
それまでの家は外縁の数列の瓦だけ釘で打ち付けてあって他は乗せてあるだけ。 あとは土の接着力で瓦を押さえているだけ。 だから台風や地震ですっとんでしまうのです。 災害で地域が一度にこうなると地域の屋根屋さん ぴよぴよ🐤 くて、とても修理に来れません。 と云うわけで新建築基準に合わせた瓦の葺き方に変えてもらうために葺き直しを注文したのです。 伊豆富士箱根丹沢地区はフィリピン海プレートとユーラシアプレート、太平洋プレートの衝突点なので地震は多いです。
これだけの土と瓦。 一体何トン?
我が家の場合で瓦だけで10トンの瓦が乗っています。これをスレート瓦にすると3トン、トタン屋根だと1トンに軽くできるそうです。 これが東大寺大仏殿の瓦になると1,500トン。 それをあれだけの柱で支えているのですから「たいしたもんなんですよ」 それだけ重ければ、そりゃ瓦屋根の家は地震で潰れるよ。。。 と普通に考えますよね。
また、関西では見栄で瓦土をものすごく厚くする事があるのだそうです。 20-30cm。 軒瓦の下に土が厚く出て、それを漆喰で塗りつぶすのが贅沢とされているそうです。
「関東の家は関東大地震以来建築基準になくても筋交い(すじかい)がやたら入っていましたが、関西の家は筋交いがはいっていないんだもの。 直下型地震。 そりゃ潰れます。」
屋根を破って助け出せないかと当時思ったものですが、そんな分厚い屋根では破りようがなかったのですね。
では軽くしたら潰れないのか? というとそうでもないのよ。 高校物理で習う共振で構造物は潰れます。 だいたい本邦国民の半分くらいは高校で物理Iはとったろうから、なるほどと思うでしょう。 共振と云う言葉を忘れてしまった気の毒な方々には以下の「屋根を軽量化しただけじゃ潰れますぜ」の説明をどうぞ https://www.yane.or.jp/simulation/simulation.shtml
屋根が重ければ建物の重心は高くなり共振周波数は低くなります。 屋根が軽いと重心が低くなりますが共振周波数は上がります。 直下型地震は周波数が高いのよねぇ。。。
屋根を軽くすると耐震性の劣化という想定外のデメリットが出ることもあるそうです。 旧耐震基準や新耐震基準で建てている木造住宅はホゾ組で木材に穴掘って、差し込んで建てる伝統工法です。
重い屋根瓦が前提の、それらの家の屋根を軽量化すると、ホゾが緩んでグラグラになってしまうのだそうです。 我が家の近所に総瓦から銅葺に替えたお屋敷がありますが、風で家が揺れるようになったそうで「二階で船酔い」状態。
これが2000年規準だと金物やボルトでガンガン締め付ける工法なので、屋根を軽くしようが何しようが影響はないようですが。
とはいえ素人は軽い屋根の方が安心と考えるし、屋根屋さん曰く「と皆が思うので新築で日本瓦の家は本当に減りました」だそうです。 我が家も今回葺き直すにあたって、アルミ瓦に替えるか?と考えていたくらいです。
市場がその有り様ですから、需要激減で廃業が続き瓦を葺ける屋根屋さんはいまや絶滅危惧種です。 大工さんが足りない! という報道も昨今ありますが、屋根屋は「足りない」ではなくて「居ない」。 「重い屋根の家は危ない」と消費者が思ったら需要は減りますものねぇ。 「素人考え休むに似たり」なのは、どの産業でもそうなのですが。 興味深い実例が上の銅葺に替えた家のお話。
「西日本は台風常習地帯です。 なので銅屋根とか瓦と銅の併せ屋根とかはほぼ無く、本瓦で屋根面ベッタリ瓦葺きがほとんど。 何故かと云うと、そこまで重くしないと台風で家が飛んでしまうから。 関東の人には想像もしない風が吹いてクルマが普通に舞ってしまうのです。」
そこまで重くしておいて熊本地区の耐震基準は係数0.8-0.9と甘くしておりました。
構造が弱い(共振に弱い)、直下型地震、、、 屋根が丈夫過ぎて救助できない。 熊本地震の屋根復旧の応援に行った屋根屋さん曰く「高台から見ると屋根瓦がすっ飛んでいる家、潰れている家が活断層に沿ってまっすぐに続いていました。」、 「能登半島地震でも最新の建築基準で建てている家は潰れていなかったし、最近葺き替えた家は家が傾いても瓦は落ちていませんでした。」
(傾いていても発災当初雨露をしのげるのは雨漏りしない屋根があるからなのよ。)
熊本と能登半島には1982年の新耐震規準以前の弱い古い建物が残っているというのもあれだけ家が潰れた理由でもあるでしょう。
ちなみに神奈川、静岡、東京は耐震係数1.2ですのでかなり丈夫です(その分お安くない)。
ここで不動産屋が中古住宅を売るときに素人を騙す手口をご紹介しましょう。 「この家の耐震基準は?」と聞くと
「新耐震基準です!」
皆様騙されてはいけない。
- 新耐震基準は1982年から1999年までの規準、
- 旧耐震基準は、それ以前の規準、そして
- 現行の基準は「2000年規準」とよばれております。
新耐震基準と聞かされて安心してはいけません。 「新」は前世紀の規準なのです。 さらに2000年規準も細かい改正が入りまして2022年には屋根瓦の全釘打ちが義務になりました。
まぁ不動産業は嘘の多い業界だからね。 在宅勤務で地方の中古住宅を買う人は特に気をつけてね。
ちなみに瓦の寿命は100年、30-40年ごとに防水シートの張り替えで瓦はほとんど再利用できますが、
スレート瓦は20年、塗装して伸ばしても30年。 30年経ったら全部新品にしないといけません。
ガルバニウム鋼板屋根は30-40年ですが、これも内部から腐食が進んでいきなり穴が空くので、全貼り直しが必要です。
トタン屋根は15年がいいとこですな。 あれ、まめに点検していないとガンガン漏れます。(PGJの生まれ育った家やZLの家はトタン屋根だった)
さて、瓦のなるほど!な話はまだ続きます。