電気用品安全法(いわゆるPSE)の「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について(通達)」の別表第十二は「国際基準で設計製造された外国製の電気製品を認めてやるよ」という建付けですが、実は「JISの日本固有の縛りをドカドカ入れた非関税障壁」なのであります。 別表第十二のリストはこちら
IECは国際基準、JISは日本産業基準、Jは別表第十二の基準で、家電品の一般基準だと
IEC60335-1、JIS C 9335-1、J60335-1
似てるでしょ335-1は共通。 中身はだいぶ違う。
皆様がモバイルバッテリー(英語ではPower Bank)でおなじみのリチウムイオン蓄電池だと
IEC62133-2、JIS C 62133-2、J62133-2
番号62133-2は同じ でも中身が微妙に違う。
リチウムイオン蓄電池の「日本固有」だけで以下のような有り様

という訳で、国際基準を認めると言っても外国政府をたぶらかす手口がすごいわけです。 外交の勝利? まさか。
リチウムイオン蓄電池について言えば外国の基準に受かっているだけでPSEマークつけて輸入している業者が経産省や通販業者からボッコにされているのは当たり前とも言えます。
で上の別表第十二の下の方にJ1000,J2000,J3000というのがあります。 リストに載っているほとんどの基準は参考にしたIECの番号が載っていますが、この3つにはないですね。 なぜかと云うと、「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について(通達)」の別表第四や別表第八(それぞれ国内メーカー向けのゆるーい基準)から内容を引っ張って来ているからなんですなぁ。 結局電気用品取締法の昔からのゾンビが生きているわけで。
でJ1000ですよ。
J1000はリモコンを利用する製品の安全基準です。 リモコンと言っても、昔からある赤外線リモコン、IoT時代のBluetoothやWi-Fi経由のリモコン、さらに公衆電気通信回線(インターネット)経由の宅外からの遠隔操作など色々ございますが、インターネット経由やWi-Fi、Bluetooth経由の遠隔操作はこれには含まれないんですねぇ。 Wi-Fi BluetoothはIEC60335-1、JIS C 9335-1の第22項や第24.1.7項で規定しているからなのです。 またこの335-1系の基準では「目の前で扱う赤外線リモコンは遠隔操作として取り扱わない」としているのです。 まぁ 当たり前。 JIS C 9335-1はこちら(無料)
そこでJ1000では赤外線リモコンと電力線通信(アマチュア無線家の敵PLC!)を「日本固有」で足してあるのです。 今どきPLCを使っている人も少ないでしょうが(宅内電力線LANユーザーって細々と居るらしいですが)、赤外線リモコンはうじゃうじゃ使われていますね。エアコン、TV、照明、その他AV機器。 でJ1000の赤外線機器の試験はどの様に書いてあるか?

「適否は関連する試験により判定する」
その試験が書かれていない! 農学部の学生が乳製品のタンパク質量を測るときに「常法により」とあったら「はい ケルダール分解ね」というのはわけが違う。
「一体 関連する試験とはなんなんだ?」
で答えが載っていたのが、わう様が眺めているあの本ですよ。
「電気用品の技術基準の解説(分冊)遠隔操作に関する報告書等」一般社団法人日本電気協会
高い本ですよ。 買いましたよ。
皆さんは買わなくていいです。 赤外線リモコンの試験方法は下に書いときます。 なんのことはない、この本には「別四の基準を使え」と書いてるだけです。
以下「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について(通達)別表第四 1、(2)、ロです。
ロ 遠隔操作機構を有するものにあっては、器体スイッチ又はコントローラーの操作以外によっては、電源回路の閉路を行えないものであること。ただし、危険が生ずるおそれのないものにあっては、この限りでない。
(イ)「器体スイッチ又はコントローラーの操作以外によっては、電源回路の閉路を行えないもの」とは、次に適合するものをいう。この場合において、感度調整可能なものは、最大感度とするものとする。
a 赤外線を利用した遠隔操作機構
電源電圧を定格電圧の±10%とした状態で次のいずれにも適合すること。
(a)20W2灯式白色蛍光灯及び 100W の赤外線ランプを受光器前面 10cm の距離に保持し、おのおのにつき連続 2 分間点灯したとき及び 1 秒点灯、1 秒消灯の操作を 60 回行ったとき閉路しないもの
(b)20W2灯式白色蛍光灯を受光面から 10cm の距離に保持し、遠隔操作機構に使用されている周波数(連続正弦波)で蛍光灯を連続 2 分間点灯したとき及び 1 秒点灯、1 秒消灯の操作を 60 回行ったとき閉路しないもの。この場合において、蛍光灯に印加する電圧は 50Hz 又は 60Hz の 100V 電源により、上記蛍光灯を点灯した場合の輝度とほぼ同じ輝度を発光する電圧とする。
原典はこちら(経産省)
赤外線リモコンの信号方式にはNEC方式とか家電製品協会方式とかがありますが、いずれもミリ秒の単位の信号を出している信号を送っているのです。 温度上げ、温度下げ、冷房オン、チャネル1,CS切り替え、ボリューム上げなどなどなど。 信号フォーマットについての説明はこちらが参考になります。
ともあれミリ秒の単位の信号の動作が1 秒点灯、1 秒消灯の操作を 60 回行ったときのような1000倍以上低速の信号で撹乱されるわけがなく、この試験で不合格になる赤外線リモコンなど現在存在しないでしょう。 つまり無駄な試験。 ただ やっていないと電安法の8条違反になるというからやっているだけ。 ということがわかりました。
PLCについても別表第四の同じところに書いてあります。
ところで今年は経産省が別表第一(電線)を廃止するというので、電気屋さんが大騒ぎしているようです。 国際整合化とか言いながら、JISにまるでコピーが出てきています。
J71001(2019) 電線及び電気温床線の安全に関する要求事項 =JIS C 3010:2019
まるっきり別表第一と同じかなと思いながらJIS C 3010を翻訳したら(英語版が出ていない)、結構解釈の差異を見つけられました。 しばらく海外の電線業界は頭痛いだろうかねぇ。