箱根寄木細工

神奈川県西部の住人にはポピュラーで「あれはきりが無い」と評価の高い工芸品が箱根寄木細工です。 小田原かまぼこが小田原市内企業(製造は県外でも構わない)でないとNGなのと違い、箱根の寄木風であれば、箱根町(JCG1103C)以外の企業が製造していても箱根寄木細工です。
各社の所在
https://www.hakonebussan.com/title_01_3_12.html
名が通っていると云うと、小田原市(JCC1107)早川の露木木工所、同市入生田の本間、箱根町畑宿の浜松屋、同畑宿の箱根駅伝のトロフィーで知られた金指ウッドクラフト、アマゾンさんのTV広告で日本の中小企業の代表になった丸山物産、というところでしょうか。
PGJが海外用土産で購入する店舗は上記丸山物産か、金指寄せ木工芸館。 前者は外国からのビジターを連れて行くには良いです。 後者は品揃えの幅が広く工芸品好きな人を連れて行くのによろしいです。
工芸の世界で「この柄はもう作る人が居ない」という話はよく聞きます。 有田焼の深川製磁のような企業規模でやっていてもそういう柄や製品があります。
技術/技能を持つ人が絶えると云うより、それらの技術/技能(work hours)に値する売価が得られないので製造されなくなり、結果的にそのワザが絶えてしまうのでしょう。
箱根の寄木細工は細密な模様を鉋で薄く削ってそれを木地に貼るのが一般的でしたが、最近は無垢が増えました。 無垢のほうが高級そうで値段がとれるのもありますが、そもそも大きく作って安定的に鉋で削れる(づく削り工程)技能者が減少しているのではないかと気がします。

づく削り動画
かくして店頭で「あの柄はもう作る人がいません」「この在庫が最後。これを作れた最後の人が死んじゃった。」というの珍しくなくなってきました。 以前は売り文句だろうと思っていましたが、本当に店頭に出なくなっています。 幅二尺の箪笥で古典細密柄の新品在庫は絶滅寸前と思ったほうが良いです。
今回PGJが買った紗綾型(さやがた)柄は「づく削り」するときに割れやすい為、大型製品が激減だそうで。

こちらは畑宿の最近亡くなった職人さんの作品

こっちは丸山物産
上記2製品くらいのサイズだと作りやすいのでまだザクザクあるようです。
また「八重麻も大きいのは出なくなった」そうです。

八重麻文様
この他に典型的な箱根寄木の文様ではないですが、メルカリで国鉄懐中時計の台を見つけました。 これまた廃業された箱根細工製造業者さんの作品だそうです。
流石にピッタリ。 足柄平野には明治時代に国府津機関区、山北機関区が設置され、その後、国府津電車区ができたのもあり鉄道系の古物が出てきますが、箱根細工の時計台があるとは思いもせず。 (考えてみりゃ同じ足柄地区の産業ではあります)


この機械式国鉄時計の製造は現在のエプソン。
同じ工房の作品で珍しい無垢の秘密箱も売られていたので入手しました。 無垢で秘密箱を作ると木の収縮で開かなくなったりするので実は結構珍品。


内側から見るとわかります 無垢でしょ
一番小さいのは この大きさ


これが無垢で さらにこの様に開くのです
凄い手わざです
いい製品があるのに世に知られず絶えてしまう技能や製品、企業があります。 モノが良ければ宣伝なしでも売れると言いますが、モノが良くて更に宣伝すれば、安定して製造や運営ができるのに、箱根細工工房、パラパラと閉業で実に残念。
北陸の金銀梨地蒔絵漆器のように需要が極小で、いまや博物館でしかお目にかからない。 たまにあっても「正月屠蘇一式と五段重が三越日本橋で1,200万円でした」のようなことになると、もう産業としては成立しないですしね。
PGJが初めて行く海外工場や初めて会う海外の同僚に土産で持っていくのが箱根寄木細工の秘密箱です。
「日本の法規制や、製品規格、消費者の求めるものは訳がわからんだろう。 しかし、この箱のように手順を踏めば必ず開く。 米国企業のように米合衆国通商代表部という金槌で叩き壊して開けるというのも手だが、そこまでしなくても手順を踏めば市場参入など難しいものではない。 ほれこの通り!」と言いながら開けるのです。
というわけで、地球を見渡しても他に例の少ない木象嵌、寄木、木からくりが、今後も産業として生き残ってほしいなと思う年末年始でした。

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